電話
『ねえ先生、私誰だかわかる?』
数年振りの電話…
私にとってはとても印象的なクライアント。
もちろん覚えている。
声が潤んでいたので、
『久しぶりだね、どうしたの?風邪ひいてるの?それとも泣いているの?』と聞くと
彼女はここ数ヶ月もの間
体調不良で何度も何度も風邪をひいて
治りきらないという。
時々、咳き込んだりする。
無理をしないで、病院に来るように言うと
彼女は今、高山を離れ都会に住んでいると言う。
『都会はどう?』って聞くと
『こっちはね、なんでもあるんだよね…車無しでも生活できるし、時給もいいしね…』
と、しばらく間をおいて
『でも、やっぱり高山の方がいい…』
この言葉を聞いて何となく彼女がいとおしくなった。
彼女がどうして電話してきたのかわかったような気がした。
『高山は今日もいっぱい雪が降って真っ白だよ』と私は伝えた。
彼女はいつ帰省するかわからないけど
調子も悪いし、帰省の時にカウンセリングの予約をしたいと言った。
私は
『身体に気をつけて。毎日を楽しんで。自分のこと大切にしてね…電話待ってるから』と伝えると
『声が聞けてよかった』と言って彼女は電話を切った。
ほんの数分のやり取り…
この電話で私は彼女から何かをもらったように感じた。
上手く言えないけど
こころの奥にある
雪に凍える小窓に小さな灯がともったような感じ…
そして、色んなことがもっと頑張れる気がした。